“New” DURA-ACE R9100インプレッション
成城店スタッフ 田中 敏樹
4年ぶりのフルモデルチェンジを果たしたシマノDURA-ACE(デュラエース)。
前作の9000系DURA-ACEが非常に高い完成度を持っていた為に、そこから何をどう進化させてきたのか?という部分について気になっている方も多いでしょう。
そこで、BEX ISOYA成城店スタッフの田中が新型R9100系DURA-ACEをライダー・メカニック双方の目線からインプレッションしていきます。
◆ルックス
初めて実物を見た時には、前作9000系よりも黒を基調にした重厚な雰囲気を感じました。
更に太くなったクランクアームと大きく形状を変えたリアディレイラーが特に目立ちます。
年々ボリュームを増す各メーカーのカーボンフレームに合わせたデザインでしょうか。
表面は綺麗に磨き上げられた上でアルマイトや塗装の仕上げが施されていて、流石デュラエース、という質感です。
◆STIレバー(シフト・ブレーキレバー)/ ST-R9100
前作で一気に細くなったSTIレバーですが、ブラケットに手を置いてみるとわずかに太くなったように感じます。
握り部分の周長を実測してみると従来とほぼ変わりないのですが、横幅が1mmほど広くなったためにそう感じるのだと思います。
逆に縦方向には2~3mm薄くなっているので、強く握りこんだときのグリップ感・指の掛かりはこれまでよりも良好です。
レバーは上から1/3あたりに前方向への出っ張りが設けられていますが、ブラケットからブレーキを掛ける時に指がここに上手く引っかかりより安定したブレーキングが可能です。
内部構造が変わったのか、メインレバーと解除レバーを同時に押してしまった時に空打ちしてしまう、いわゆる”ゴーストシフト”の発生も大幅に減りました。
◆フロントディレイラー / FD-R9100-F
ワイヤーを止めるアームが短くなりました。これまでは長いアームで引きの軽さを出していただけに操作が重くなってしまうのでは?と懸念していましたが、その心配は杞憂に終わりました。
一見しただけではどのようにワイヤーを通すのか想像もつかないような構造ですが、引きの軽さは前作を引き継いでいます。
メカニック的な目線で言うと、これまではフレームによってセッティングを変える必要があったのに対しどんなフレームでも同じセッティング、調整方法で常に安定した性能を発揮させられるのが嬉しいところです。
ただし調整方法は従来と大きく変わっているので、もしご自分で調整を行う際はマニュアルを熟読する必要がありそうです。
◆リアディレイラー / RD-R9100-SS
一目見ただけでずっと印象に残りそうな斬新なデザインです。
既にマウンテンバイクでは標準となっているシャドーデザインのリアディレイラーは、横方向への張り出しが少なく万一の落車時でもダメージを受けにくそうです。
アウター受けの位置の都合上、リアディレイラーに入るアウターワイヤーは急カーブに対応した専用品を使う必要があります。
特に最近のワイヤー内蔵フレームの場合はこの点に注意が必要ですが、逆にギアポジションに関わらずアウター受けの位置が一定なので変速の安定感は高いと思います。
ケージはミドルケージ一種類のみ。ロー30Tという大きなスプロケットまで対応します。
後輪の着脱への影響も特に感じられません。普段通りの作業で問題無いでしょう。
◆クランクセット / FC-R9100
基本構造は9000系を引き継いでいますが、右クランクの一番力が掛かる部分は更に幅広になり黒い仕上げと相まって迫力があります。
チェーンリングもその形状に合わせた専用品の為、PCDこそ共通ですが従来のものとは互換性がありません。
カーボンクランクをラインナップするスラムやカンパニョーロと違ってアルミニウムにこだわり続けるシマノ。見た目は重厚ですが、持ってみると拍子抜けするくらいに軽量です。
この軽さと剛性、そして製造精度は他のメーカーには真似できないでしょう。
◆カセットスプロケット / CS-R9100
構造は変わらず、トップ側は肉抜きされたスチール製、ロー側はカーボン/アルミアームに支えられたチタン製の軽量スプロケットです。
11-30Tというワイドギアが新たに登場しました。上りのきついロードレースやヒルクライムなどで強い味方になってくれそうです。
対して、ローギアが小さい11-23Tがラインナップから外れました。ホビーライダーから評判のいい12-28Tは継続で製造されます。
<ライドインプレッション>
今回はブレーキ以外のパーツがR9100系DURA-ACEで組み上げられた「Domane SL8」に乗って新型デュラエースの性能を体感してきました。
しかし、前作9000系の時点で極めて高い性能を持っていたデュラエース。登場から4年経ったとはいえ、どの程度の性能差を感じ取ることが出来るのでしょうか?
成城店で毎週開催している「サンデーライド」も含め、計100km程を乗り込んでのインプレッションです。
まずは平坦を流して走ってみました。
やや幅広になったブラケットは手を乗せているのが非常に快適です。
巡航速度を上げてブラケット先端を握り込むような持ち方にしてみると、左右非対称に成形された先端が手によくフィットしてくれます。
この設計はヒルクライムでもメリットを感じられました。
休むダンシングでブラケットに体重が掛かっても快適、かつアタックを掛けるように強く握り込むとしっかりとグリップしてくれます。
下り坂でのブレーキングではブラケットを持ったままでも不安なくブレーキレバーに指が掛かり、下ハンドルに持ち替えるまでもなくリラックスしたダウンヒルが楽しめます。
寒さを堪えて素手でも握ってみましたが、表面の滑り止め加工もよく考えられていて手を滑らす心配も少なそうです。
次は変速性能をいろいろな条件で試しながらの走行。
前作9000系からの進化を一番大きく感じ取れたのはフロントのシフトアップでした。
これまでは(フレームの設計によりますが)動き始めが若干重く、それを過ぎると一気に軽くなるような動きをしていました。
それが、R9100系では変速操作の開始から完了まで均等に軽い動きを維持してくれるような印象です。
非常に高い剛性と精度を持つギア板と相まって、フロント変速とは思えない動作スピードであっという間に変速してしまいます。
リアに関しては新しいディレイラーがギアへの追随には不利な構造なのでどうかな?と思っていましたが、デュラエースの名を冠して出してくるだけのことはあり、どんな場面でもバシバシ変速してくれます。
また、電動コンポ並みに大型化したシフトレバーのお陰で、下ハンドルを持ってスプリントしながらシフトアップするような場面でも指先で確実に操作できるようになっています。
今回はバイクの構成上ブレーキ本体をテストできなかったのが残念なところです。
デュラエースのブレーキは従来から非常に軽い動作と高い制動力を持っていた名品。そこにアームのたわみを抑えるブースターが追加された新作が素晴らしくないわけがありません。一度使ってみたいものです。
<まとめ>
シマノの最高峰コンポーネントであるDURA-ACE。前作9000系の性能を引き継ぎ、そこへ更なる信頼・安定を加えたR9100系は流石の完成度でした。
想像を絶するような過酷な環境で走るプロ選手にも信頼されるDURA-ACEですが、その性能は決して選手だけのものではありません。
サイクリングの経験や競技レベルに関わらず、日常のライドをより楽しく、快適にしてくれる道具であることは間違いないと思います。
今回のインプレッションで使用したこちらの試乗車は川崎店に常設中。事前予約で成城店でも試乗可能です。是非この高性能を体験してみてください。
関連リンク